GDP年率換算マイナス12.7%について

2月16日に、四半期別(10〜12月)のGDP速報が発表されて、日本の実質GDPの成長率が、前期(7〜9月)比で-3.3%。年率換算で-12.7%。第1次オイルショックの1974年1〜3月期の年率13.1%減に次ぐ急激な落ち込みだそうです。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe084/main1.pdf

ちなみに、アメリカが年率換算で-3.8%。ユーロ圏が-5.7%。ということで、金融危機震源地のアメリカよりはるかに悪くなっているのは何故?っていうことが気になりますね。多くのメディアでは「外需依存型だったので、その外需が冷え込んだことにより、大きな影響が出た」というようなことを書いています。でも、これ、なんか変だと思いません?だって、その外需のメインであったアメリカよりもはるかに落ち込んでいるわけですから。
ということで、経済シロウトなりに考えてみました。速報を見てみると「内外需実質寄与度」という数字が出ています。内需寄与度が-0.3%。外需寄与度が-3.0%。なるほど、-3.3%の内の-3.0%が外需によるものなのですね。ちなみにこの-3%という数値を年率で換算しても-11%を超えるわけです。でも、アメリカのGDPは年率換算で−3.8%。なぜ、日本にこれほどの影響が出るのか?
ひとつには、日本の輸出しているものの多くが、工業製品、それも自動車や電気製品など高付加価値の耐久消費財。もっとも景気の影響を受けやすいものだということが考えられます。実際ヨーロッパでもドイツ-8.2%、イタリア-7.1%と、景気の影響を受けやすい品目を多く生産している国(ドイツは自動車、イタリアは高級服飾?)の方が、よくないですね。
でも日本の落ち込みはそれだけではとても説明できないレベルです。そうなると、あとは...そう!円高の影響しか思い当たりません。
考えてみれば2008年の7〜9月期は1ドル108〜110円あたりで推移していたんです。それが10〜12月期には1ドル100円台を割り込み、一時は90円台を割り込むほど。名目 → 実質の計算の際に、円高がどう働くのかはちょっとよくわからないのだけど、それでもかなりの影響がありそう。つまり何故日本のGDP成長率がこんなにひどいのか?というと、外需依存型だったというのは正解ですが、その外需が冷え込んだことと同時に、円高がさらに拍車をかけたということだと想像します。
ちなみに、GDPとはあくまでもフローの数値です。世界金融危機は、まずはストックに大きな影響を与えました。日本において今回の金融危機の影響が少ないといわれているのは、ストックの部分です。そして、皮肉にもフローの部分でもっとも大きな影響を受けているのが、これまた日本のようです。逆に言えば、世界金融危機によるフローへの影響は、まだまだこれからなのでしょう。ほんと、どうなるのでしょうか?


ところで、GDP速報を見ていて気づいたのですが、日本のGDPは2008年4〜6月期に-0.9%と、大きく落ち込んでいるんですね。このときには内需寄与度が-1.0%、外需寄与度は0.1%。日本の景気は、実は内需から先に大きく後退を始めていたことがわかります。

ちなみに、リフレ派の人たちは、日銀の金利引き上げによって、2006年頃から日本の景気は停滞局面に入り、2008年から後退局面に入ったと言っています。確かにそのような状況を数字も表しています。でも日銀の金利引き上げによるものなのかは、ちょっと疑問があります。なぜなら首都圏における不動産バブルを見てきたから。
2006年頃、日本全体で見れば景気はたいして上向いていなかったかもしれませんが、首都圏の不動産はヒートアップしていました。そして、2008年に入ってからの景気後退は、この首都圏の不動産バブルがはじけたことによる影響も少なくはないと思います。
金融政策とは、景気がヒートアップしている場合には引き締め、景気が停滞している場合には緩和するものだと理解しています。では、首都圏の不動産はヒートアップしているけど、日本全体では停滞している、なんて場合にはどうすればいいんでしょうか?そのまま金融を緩和し続けて、一部のバブルをさらに膨らませるのが正解なのでしょうか?そしてその泡がはじけたら...
実はもうバブルでしか国内需要は拡大できなくなってきているんじゃないか?なんてことまでも考えてしまいます。ということで、このあたりの問題意識は、いずれまた、ちゃんと勉強・整理してからにします。


追記:
日銀の分析が発表されました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0902.pdf
15ページの「(BOX)最近の鉱工業生産の大幅な減少について」がわかりやすいですね。(図表は最後の2ページ)
もっとも景気の影響を受けた産業のウェイトが高いと言うことですね。それに現地在庫の圧縮や為替円高が追い討ちをかけているというところですか。僕が思っていたほど円高の影響は大きくないようですね。
そういえばアメリカのGDPにおいて、自動車産業のウェイトって、かなり小さかったことを思い出しました。部品なども国外調達が多いようですね。なるほどなるほど。