「国際金融入門 新版」岩田規久男

国際金融入門 (岩波新書)

国際金融入門 (岩波新書)

今回も、またまた岩波新書。リフレ派の大御所、岩田規久男先生の国際金融に関する入門書です。
岩田先生は、この8月に「日本銀行は信用できるか」という挑発的なタイトルで講談社現代新書から本を出されているので、そちらも気になってはいるのですが、やはり金融や経済の基本は大切だということで、こちらを先に読了。


さて、この本ですが、旧版が出版されたのが1995年。今回の新版が今年の7月。14年も前に出された本の改訂ということになるのですが、この間にも、ユーロの通貨統合や、東アジアの通貨危機、そして昨年の世界的な金融危機があり、これらのことが新たに内容に盛り込まれています。さらに、この本の最後のほうに浜田宏一岡田靖「実質為替レートと失われた10年」(『季刊政策分析』2009年春号)が紹介されているんですが、おそらくこれも新版で新たに入った内容ですよね。この部分は、それこそ旧版を読んだ人でも読む価値ありと思えます。


僕は、今年に入ってから経済学というものを趣味で勉強し始めたんですが、マクロ経済学ミクロ経済学の優れた入門書はたくさんあり、おかげさまで僕のような素人でもなんとなく理解できている?つもりにはなれました。でも、金融、特に国際金融については、なかなかいい入門書が見当たらず。そんななか国内金融については、同じ岩田先生の「金融入門 新版」に出会い、これがよく整理されていて良かったので、次は「国際金融入門」だな、と思っていたところでの改訂。まさにベストタイミングです。


内容は、ちょっと難しいです。経済学の入門テキストと、岩田先生の「金融入門 新版」を読んだくらいの知識レベル向けでしょうか。経済学の知識がほとんどない人には、ちょっとつらいと思います。
読んでみての感想ですが、いやはや、これはもう、経済とか国際政治とか語る人には必修の内容でしょう。僕はいままで、こんな基本的なことを知らずに、断片的な知識だけでなんとなくわかっているような気になっていたんだ、ということを思い知らされました。とにかく、為替、通貨、金融にまつわる話が体系的にまとめられており、今まで断片的だった知識が、すべて結びついたというか、スタグフレーションや日米貿易摩擦など、国際通貨制度という視点から見た場合に、こういう風に整理されるのか、と、ちょっと感心してしまいました。
逆に言うと、いかにこの分野で、誤った情報、トンデモ情報が広く流布しているのかも、あらためてよくわかりました。「強い円は日本の国益」だとか「基軸通貨ドルの終焉」だとか、書店の経済本コーナーにはこんな本ばかりが並んでいたりして、タイトルからして胡散臭いなあ、と漠然と思ってはいたのですが、岩田先生のおかげで、ちゃんと理論武装できました。


岩田先生の文章は、色気がないというか、とにかく淡々と説明されるので、余計な修飾や煽り、話の脱線などが一切なく、つまりは1ページ当たりの重要な情報の密度が濃い。とにかく丁寧に読み進んでいかないといけない。薄い新書だからといって、なめちゃいかんです。僕自身も、まだ理解しきれていない部分が結構ありそうなので、また何冊か経済本を読んだ後で、再度読んでみようという気にもなっています。


金融入門 (岩波新書)

金融入門 (岩波新書)

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)