日本の不動産不況について考える 

2月16日にテレビでやっていたのを、たまたま見てしまいました。
NHKスペシャル 沸騰都市 最終回 TOKYOモンスター
シリーズみたいですが、見たのはこの回だけです。
正直、見ていて痛々しかったです。おそらくこの企画はずいぶん前から動いていたんでしょう。しかもわざわざアニメーションまでつくって...でも、企画段階で意図された「沸騰感」は、今の東京にはありません。
番組では、首都高の山手トンネルなど、公共ライフラインの地下への拡大と併せて、豊洲のマンション開発、三菱地所による丸の内の大規模再開発、森ビルによる港区での再開発などが紹介されていました。そうそう、不動産、景気よかったんですよ、ちょっと前までは。


でも今は...
2008年以降倒産した、上場建設不動産企業

  • 2008年
3月 レイコフ 107億円 民事再生
6月 スルガコーポレーション 620億円 民事再生
7月 真柄建設 348億円 民事再生
7月 ゼファー 949億円 民事再生
7月 キョーエイ産業 97億円 民事再生
7月 三平建設 167億円 民事再生
8月 アーバンコーポレイション 2558億円 民事再生
8月 創建ホームズ 338億円 民事再生
9月 Human21 464億円 民事再生
9月 リプラス 325億円 破産
9月 シーズクリエイト 114億円 民事再生
9月 ランドコム 309億円 民事再生
10月 エルクリエイト 60億円 破産
10月 新井組 427億円 民事再生
10月 ニューシティ・レジデンス投資法人 1123億円 民事再生
10月 井上工業 115億円 破産
10月 山崎建設 200億円 会社更生
10月 ノエル 414億円 破産
10月 ダイナシティ 520億円 民事再生
11月 ディックスクロキ 181億円 民事再生
11月 オリエンタル白石 605億円 会社更生
11月 モリモト 1615億円 民事再生
12月 松本建工 134億円 民事再生
12月 ダイア建設 300億円 会社更生
  • 2009年
1月 クリード 650億円 会社更生
1月 東新住建 431億円 民事再生
2月 日本綜合地所 2142億円 会社更生
2月 ニチモ 757億円 民事再生
2月 あおみ建設 396億円 会社更生

ちなみに、2008年に倒産した上場企業は33件。うち建設・不動産関連が24件。
こんなことになっています。
いったいなにが起きているんでしょうか?


よく言われるのが、2007年の建築基準法改正。申請手続き業務が滞り、供給側に大きなショックを与えました。さらに、アメリカ発の金融危機によって資金繰りに行き詰まったことにより、不動産不況になってしまったというもの。
なるほど、シンプルな説明です。でも、なんか引っかかります。ものすごく「他人のせい」な感じがします。だって、ちょっと前まで不動産業界は、それこそNHKの番組のような「沸騰感」に溢れていたはずです。そこには泡(バブル)の香りがとてもとても漂っていました。


そこでちょっと調べてみました。
上の倒産した会社のリスト、ほとんどが建設会社かディベロッパーです。でも1社、毛色の違う会社があります。ニューシティ・レジデンス投資法人。これ、J-REITといわれる不動産投資信託の会社です。不動産投資信託とは、不動産の証券化です。
不動産証券化 - Wikipedia
証券化といえば、まさにサブプライムショックで出てきたワードです。Wikipediaによると、不動産証券化には、不動産投資信託REIT)、商業用不動産ローン担保証券(CMBS)、私募ファンド といった種類があるようです。もう臭ってきました、プンプンと。胡散臭い金融工学の臭いが。
そしてさらにググってみると...
サブプライム問題のまとめ 日本のCMBS、J-REITがなぜピンチか?
こちらのエントリーは、ブログ主さんの個人的な見解ということなんですが、なんか説得力があります。あぁ恐ろしい。


ということで、やはりバブルだったように思えます。不動産の証券化によって資産の流動性が高まり、日本の低金利資金や外資流入。ファンドによる過剰投資で投資目的物件や都市型マンションブームが起こった。そして物件の供給は過剰ぎみになり、ブームは冷え込み、アメリカの金融危機外資が去った。そう、泡がはじけたんです。




僕がなんとなく気づきはじめたのは2005年頃だったでしょうか?豊洲タワーマンションのCMがテレビで流れ、常磐線の車窓から見えた南千住のタワーマンション群に圧倒されました。汐留、六本木の開発に始まり、品川駅の東側など、オフィスビルも次々に建設されていきました。景気がいざなぎ越えなんて言われても実感はなかったけれど、首都圏の再開発を見れば、景気はいいんだろうな...と、思いっきり他人事として受け止めることはできました。でも、こんなにどんどん計画して建築していって、大丈夫なの???という疑問というか、むしろ嫌悪感に近いものを感じていたのも事実です。


去年の暮れ、南武線に乗っていたら、武蔵小杉のタワーマンション群が見えました。もう竣工して、人が住みはじめているようでした。その時は夜7時頃。ところが窓の明かりが、ほんの少ししか灯っていないのです。売れていないのだろうか?とそのときは思いつつ、後日不動産関連に勤める知人に聞いてみました。「売れてはいるけど、その多くは投資目的で買われているのでは?」と言われました。この話が本当なのかは、今もよくわかりません。でもまったくのデタラメとも思えません。
武蔵小杉に500戸以上の高層マンションが5つも建築されるというのは、どう考えても多すぎです。あの景気がよいといわれた名古屋の駅前をはるかに凌駕するマンハッタンな景観です。ちなみに川崎市は、川崎駅の西側の再開発や、新百合ヶ丘北側の大規模開発が進行しています。その他にも溝の口など、それこそ500戸越えの大規模マンションがあちらこちらに次から次へと建設されてきているんです。


アメリカ発の危機に日本も巻き込まれてしまった」という言い方は、なにか片手落ちのような気がします。程度の差こそあるものの、日本も、そして世界中が、アメリカと同じようにバブルに踊っていたんじゃないでしょうか?グローバルな金融自由化と、世界的な金余りによって。