個人事業主(自営業)にもっと光を!

ちょうど今、確定申告のために、領収書の整理をしているんですけど、その際ちょっと思ったことを...
自営業者っていうんですか?個人経営とか、家族経営のような仕事の仕方、なんかパッとしないというか、淘汰されていくようなイメージがあるんです。
僕が子どもの頃は、寿司屋とか、豆腐屋とか、床屋とか、ホルモン焼き屋とか、いわゆる個人でお店やっている家の子供が同級生にいました。でも、娘が通っている小学校や習い事のママさんたちの話を聞いていると、今はあまりいないですよね、そういう親。たしかに近所では個人商店って、ものすごく減ってしまいました。まあ地域によっても違うんでしょうけど。ちなみに僕には縁のない私立の小学校では、医者やら弁護士やら、いわゆる高収入資格系の個人経営の親御さんたちは多いみたいです。
また、僕が仕事上関わったことのある自営業者?は、フリーのライター、デザイナー、カメラマン、イラストレーター、マーケティングプランナー、プログラマーなどなど。ライターさんでも、広告系ではなく出版系の人たちは、なんというか業界を底辺で支えるワープアなイメージがあります。デザイナーもWeb系は「どうなんでしょう?」と言いたくなるくらい、安い仕切りで仕事しているところも多い印象があります。みんなカタカナ職業ではあるんですが、今となってはパッとしないものばかりのような気がします。
さらに、個人事業主と言えば、思い出されるのはバイク便の労働者。個人事業主ってことにされて、事故っても労災も適用されず、ひどい待遇でした。
バイク便は、個人事業主ではなく労働者である。「厚生労働省が見解」 - 皆でつくろ労働相談奮闘記(旧「風太郎の労働相談奮闘記」)
あと、コンビニ経営者。店のオーナーには厳しく、本部には有利な契約によって、ギリギリのところで経営しているようです。
マスゴミとセブン・イレブンの正体 - シートン俗物記
セブン−イレブン:値引き制限調査 コンビニ商法に逆風 加盟店の負担重く
このような、経営リスクを押し付け、利益だけを得る手法は、この不景気の中、コンビニだけでなく、小売、外食チェーンに大きく広がってきています。
なんだか嫌な感じです。
加えて、社会保障の側面から見ても、年金や健康保険、雇用保険など、どう見ても雇われの身になった方がいいんじゃないかと思える今日この頃です。唯一おいしいのは、税金の申告ぐらいですか。常識で考えれば、あまり独立なんてことは考えない方が賢いのでしょう。


さてさて、なぜこんな話をしたかといいますと、実は日本経済の構造について、いろいろ気になってもいるからなんです。
ウィキペディアの「資本主義」についての記述の中に、「レギュラシオン学派による資本主義類型」ということで、以下のような資本主義の類型が紹介されています。
資本主義 - Wikipedia

  • 市場原理型資本主義

アングロサクソンモデルとも言われる。金融部門の発達による民間保険メニューの充実が、福祉国家を不要とする。また、製品市場競争は低品質・低価格競争が主であり、低賃金労働者の需要が多い。そのため低賃金化を促進するために、やはり福祉国家の削減が推進される。また金融部門の発達が株式市場の活性化を促し、上場企業に対する短期利益の追求を要求する。そのため低賃金労働者への需要が多くなる。

北欧モデルとも言われる。金融部門の未発達が福祉国家の必要性を促進する。また賃労働関係における同一労働同一賃金福祉国家による積極的労働市場政策とが、雇用の流動性を促進する。製品市場競争における貿易依存度の高さは、安易な賃金上昇を回避するための同一労働同一賃金へと繋がった。

  • コーポラティズム型資本主義

大陸ヨーロッパモデルとも言われる。金融部門の未発達に対して、中程度の福祉国家と中程度の雇用保障で対応する。

  • 自営業型資本主義

地中海モデルとも言われる。金融部門の未発達が強い雇用保障を促進する。強い雇用保障が大企業における雇用拡大を阻害するため、自営業者の増加を促進する。

  • 大企業型資本主義

アジアモデルとも言われる。金融部門の未発達に対して大企業が終身雇用の提供と福祉国家の代行(企業福祉)を促進する。株式市場が非活性なことは、株主が企業経営から排除されることを推進し、これが上場企業の長期戦略(終身雇用等)を可能にした。また、社会保障の未発達は個人貯蓄の増大を促し、これが間接金融による株式市場の不活性を促進する。

日本は、大企業型資本主義ということになります。ちなみに、気になるのが「自営業型資本主義」。イタリアやスペインが相当するのでしょう。これらの国は、あまり経済パフォーマンスがいい印象はないんですけど...
この類型で見れば「大企業型」と「自営業型」の違いは、「雇用保障」の違いにあるとみているようです。企業による雇用保障に頼っている「大企業型」では、自営業はおいしくないのでしょう。まあ、その企業による雇用保障(終身雇用)も大企業正社員以外、総崩れの様相ですが...


そして、僕が気になる「自営業型」のイタリア。
ほとんど全員が社長!?『イタリア人の働き方』:日経ビジネスオンライン

 著者によると、総人口5700万人のイタリアには現在約2000万の企業体が存在するという。労働人口当たりで考えれば、ほとんど1人1企業、すなわち全員が社長の国なのだ。
 当然その多くは家族および顔を見渡せる数の従業員から成り立つ零細企業。このような経済構造の国は、少なくとも先進国では他に例を見ない。

イタリアは、確かに経済パフォーマンスでは劣るのかもしれませんし、そもそも行政や公共サービスがまともに機能していないなど、多くの問題を抱えているのは確かです。でも文化的な側面で考えれば、雑多というのか、玉石混淆というか、多様性というのか、とにかく組織されていない、個人のエネルギーみたいなものを感じるのです。
一方、今の日本は、小売りや外食がみんな全国チェーンになって、どこでも一緒、金太郎飴状態なのは、文化的に非常に貧しくなってきているように思えるんですよね。最近は銀座などの繁華街でも、新しいビルのテナントに入る飲食店は、いわゆるディベロッパーの子会社による経営で、店名はそれぞれ違っていても、ある程度パッケージ化された経営手法によるものだったりします。ぐるなびホットペッパーで検索すると、そんな店ばかりが出てきます。入ってみれば、たいして旨くもなく、コンセプトや内装がとりあえず流行のものでしかないような...はっきりいって「無難」以外の何物でもない店ばかりです。
どうして、日本では自営業者の元気がないのか?を考えると、それだけで本1冊余裕で書けてしまいそうな気もするんですが、とりあえず、
もう少し、自営業というものに、スポットライトが当たってもいいのではないでしょうか?




ところで、上で挙げた「大企業型」だの「自営業型」だのといった資本主義の類型は、「レギュラシオン学派」と呼ばれる経済学派によるものですが、「レギュラシオン学派」とは、広く言えば「制度経済学」という分野の1学派になります。今現在、経済学といえば、新(ニュー)古典派やニューケインジアンなどが主流であり、「制度経済学」は異端の経済学とも言われます。「制度経済学」は、社会制度や社会意識等にスポットを当てているため、「社会学」と同じように、多様な潮流が存在していて、系統的な学問になりづらいのです。でも、だからといって、社会保障制度や雇用問題等を考える際に、制度経済学的なアプローチを無視して、安易に均衡論やマクロ指標だけで語ってしまうのは、間違いなく片手落ちです。そして、僕が最近経済学を趣味で勉強し始めたのは、最終的にはこの「制度経済学」の世界を覗いてみたいからなんです。

入門 制度経済学

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