「日本的」なるものを考えるきっかけとしての地図帳からの思考

どうもでございます。
1か月以上ブログ更新ご無沙汰しておりました。なんやかんやと仕事が忙しく、これがまだまだ続きそうなので、今回もさらっと問題意識だけでも書いて、つなぎとしておこうと思い、まあなんとか仕事の隙をついて書いております。


以前、ここで、最後にこんなことを書きました。

僕は阿部先生の「世間論」から、一度離れてみよう、と思っています。近いうちに、なんらかの話を、ここでできたらと考えています。

こんなことを書いたのは、実はもうすでにいろいろな方向へ思考が展開していて、しかも糸がなんとなくつながってきたっぽいなあ、という確信もあったからです。そこで、まあそんな思考の展開のとっかかりみたいなことを、今回ちょっと書いてみます。


ある日、なんとなく地図帳を見ていたんです。地図帳といっても、あの学校の地理の授業で使うやつですね。しかもなぜかうちの本棚に、昭和52年の帝国書院の地図帳があったんです。なんでこんな古い地図帳が家にあるのかはよくわからないんだけど、まあなんかのきっかけでパラパラとページをめくっていたんです。すると、あるページに目がとまったんです。
「集落の形態」というページです。

一部をアップしてみます。

これは、ドイツの集落ですね。(東西ドイツは当然のことながら分かれています。古い地図帳なので。)
一方こちらは日本の集落。

どうです?なにか気づきませんか?


よく、日本人は集団主義、欧米人は個人主義って言われますよね。でも集落の形態を地図で俯瞰して眺めてみると、全く逆の印象を受けます。人間関係の密度が濃そうなのは、住居が1か所に集まっているドイツの方です。一方、日本の場合はなんかバラバラです。
日本人は人間関係を大事にする。家族主義的な付き合いをする。贈与互酬、義理人情で、お互い助け合う。保守系の人たちが、欧米から持ち込まれた民主主義だの資本主義だのを否定する際に、こんな日本人の素晴らしさが説かれたりします。それに比べて、欧米の近代思想はダメだ!個人主義で利己的で、云々...ってな感じで。
でも、この集落の形態を見ていると、そうかなあ?とも思えてきますよね。むしろ、日本人は子育てや教育を、あくまで「私(わたくし)ごと」ととらえている。だから教育費というのは自己負担であるべき。とか、介護の問題も、あくまでも「家」の中の問題として扱うべき。だから、在宅介護中心だ。とか、それこそ自己責任だ、自分のことは自分でやれ、他人に迷惑をかけるな、みたいな日本人のイメージに近い。


なんとなく思っているんですが、「個人主義」「集団主義」っていう言葉で単純化すると、ずいぶんいろんなものがこぼれ落ちちゃっているんじゃないかと。やはり、どういう共同体内の関係が、歴史的に、経済的に、空間的に、イデオロギー的に、展開されているのか?立体的に検討してみる必要を感じてしまいます。


この地図を眺めているだけでも、いろいろなことが想像できちゃったりしますね。まず、農業の形態はどのようなものだったのか?ヨーロッパといえば三圃式農業で共同耕作ですよね。一方日本は稲作で、田植えと稲刈り以外は、基本「家」単位で耕作していたイメージがあります。
それで、この地図見ていても、日本の集落は「家」が中心なんだなあ、ということがやはり見えてくる。これ、逆に家族主義的な血族・親族を中心にしたアジア的共同体では、もっと住居も固まっていて、耕作地も共有地だったりしますが、日本の場合「家」単位でバラバラになっていて、しかもほとんどが私有地。教育も介護も、家の中の問題とするのは、子供も家族も、家父長を中心とする「私有」が強く押し出されてきていることなんだと思えてきます。


それと、これは日本のある地域の農村の集落形態ですよね。しかも平野部の。山間部に行けば、もっと違うのかもしれないし、同じ農業でも稲作ではなく、養蚕業とかになれば、また違ってくるように思えます。一方、農村ではなく、都市や町、それこそ職人の世界はどうか?商人の世界はどうか?なんてことも、考察してみるとおもしろそうです。少なくとも、日本の家父長的な親方徒弟制度の職人の世界と、ヨーロッパ都市のギルドでは、結構違いますよね。


つまり生産活動、労働形態、私有・共有関係、などなど人間関係にどう経済が絡んでいるのか。そこを深めてみることはとても有意義ではないのか、と思ったんです。
そこで、僕はこの問題をもうちょっと突っ込んで考えてみようと思い、そのての本をいろいろと読んでみることにしました。で、ある人を思い出したんです。近代以前の経済史、共同体の歴史...となると...
やっぱり大塚久雄先生だな、と。
丸山眞男の「丸山政治学」と並ぶ、大塚久雄の「大塚史学」。戦後の近代主義アカデミズムの大物です。といってもその後のポストモダンの嵐の中で、すっかり過去の人にされてしまいましたが...


それで、大塚先生の著作をいろいろ読んでみると、これが面白い。しかも、上で挙げた問題意識に見事に絡んでくる。さらには、まあなんというか、とても気になることが出てきたんです。といっても簡単に説明できるような話ではないので、徐々に整理していきたいとは思っているんですが。
そこで、このブログでも、大塚先生の著作を紹介しながら、僕の問題意識をうまく言葉にしていけたらと考えています。
といっても仕事がひと段落ついてからになりそうです。なので、マイペースでのんびりいきます。まあ、このブログは自分自身の考えを整理するために書いているんで...



とりあえず、今回はこんな感じで、お茶を濁しておきます。