教養としての「経済学」???

最近、経済学にハマっているんだけど、そんななか、韓リフ先生のブログでこんなエントリーを読んでしまった。

根井雅弘『経済学はこう考える』 - Economics Lovers Live

根井先生に対しては、一貫して批判的な田中先生。まあ、根井先生はシカゴ学派に対してはかなり批判的で、だいぶ色眼鏡が入っていそうな感じは臭ってきます。で、田中先生は根井先生の本の中身に関して具体的に問題点や間違いを指摘されています。でも、根井本の問題点や間違い?は置いておいて、おもしろいなあと思ったのは次の部分。

 残念なことだが、学部時代も大学院になってさえ需要・供給分析さえも危うい人たち(母校だけではもちろんない)にもごろごろ経済学の基礎さえも理解していないのに経済学者への懐疑だけは人一倍強い経済学学部生や大学院生がいた。自分達が懐疑の対象とするものを満足に理解していないで、いったい何に懐疑の念を向けているのか僕には理解できなかった。ただ単にその人たちは独善的な経済学の解釈と、あまり根拠のない経済学への不信と独特な自己流「経済学」とを吹聴するだけであった。
 その数は無視できないほど多かった(なんといってもポストモダン全盛期のことでもある)。

ついでにコメント欄

リスクマネージャー 2009/01/11 13:18
根井先生については、授業を受けていたこともあって、うっかりその毒を食ってしまいそうになったこともございましたが、韓リフ先生や山形先生のおかげで解毒できました。しかしながら、根井ウイルスの周辺には反経済学ウイルスがうじょうじょいるため、残念ながら高偏差値の大学にも末期患者がたくさんいそうです。同時期に、911テロはアメリカの仕業だとか、経済学はアメリカのイデオロギーだという説も浴びせられましたが、そこまで電波だと逆に害は少ない気がします。問題は、根井先生の教説が教養といいますか、良心のようにして迫ってくるところにあるのではないかと考えています。とりあえず、経済学の悪口をいっておけば知的な良心を満足させられるというような。

なるほどねえ。


ちなみに僕も根井先生の本は数冊読んでいて、今後もさらに何冊か読もうと思っています。なぜなら面白いから。
で、根井ウィルスや反経済学ウィルスにやられているか?といえば、うーん...そうかもしれない(笑)。

僕は、社会科学や哲学等を教養として学ぼうと思うとき、当然社会思想史や政治思想史、哲学史などをわかりやすくまとめた解説書を読みます。実際、そういう本を読むことで、自分の好奇心をうまく刺激することができるからなんです。
経済学を教養として学ぶ際には、マンキューやスティグリッツなどの教科書や入門書等々、経済学のイロハを知ることが入口になるんだろうけど、僕は同時に経済学史、経済思想史の入門解説本も読んでいます(進行形)。やっぱり他の社会科学と同じく、経済学をより面白く、刺激的に学べそうだからです。

そして、経済学史、経済思想史をわかりやすく解説したような本を探すと、あんまりないんですね。特に新しい本が(売れないからかなあ?)。そして、そんななか健闘しているのが根井先生。絶版含め、結構な点数をお出しになられている。あと2006年に出た新書で、伊藤宣広「現代経済学の誕生 ケンブリッジ学派の系譜」(中公新書)は面白かった。この人も京大出ですよね。

ついでに言うと、宇沢弘文先生の「経済学の考え方」(岩波新書 1989年初版)という本は、経済学の歴史をさらっと学ぶ上ではいい本だと思うんですが、まあ偏っています。根井先生なんかよりはるかに露骨な反シカゴ学派ノリが全開です。でも、僕は読んで面白かった(いろいろな意味で)。ちなみにこの本のエピローグに、こんなことが書いてあります。

 私は、1980年春から夏にかけて、六ヶ月間ほどアメリカのミネソタ大学に滞在した。ミネソタ大学は、規模は小さいが、魅力的な経済学部をもったところで、私は以前からよく訪れることが多かった。しかし、このときには学生たちの雰囲気が異常であったのには、到着早々驚きの念を禁じえなかった。当時ミネソタは、合理的期待形成仮説を信奉する人々のメッカの一つになっていて、学生たちだけでなく、他の大学からも少なからぬ数の人々が集まっていた。かれらは、合理的期待形成仮説をREと呼んで、相互に、この仮説の信者であることを確認し合っていた。
(中略)
 ミネソタ大学には、私の滞在するしばらく前に、ジェームズ・トービンが一学期講義にきていたが、RE信奉者たちの妨害にあって、ほとんど講義を進めることができなかったという。

なんといいますか、田中先生が嫌悪する「経済学」懐疑論者たちの対極ではありますが、でもなにか通じるものもありますねえ。「経済学」を「ケインズ」に置き換えてみると。
若いっていうのか、アオイっていうのか、こういう人たちはいくらでもいます。で、そういうことも含めて社会科学っていうのは面白いわけで、経済学も例外ではないと思うんです。だから根井先生の本も楽しんで読んじゃっていいんだと思うんです。

ついでに言うと、根井ウィルス?の解毒剤になるかどうかは知りませんが、

なんてあたりも、読もうと思っています。

なんか僕の興味の持ち方は、「教養としての経済学」というよりは、「娯楽としての経済学」という側面が強いのかな?